2011年8月3日水曜日

骨髄ドナーコーディネートについて

夕方、骨髄移植コーディネーターのWさんから電話がありました。
「先日の血液検査の結果、岡崎さんのDNAタイピングが患者の方の一致しませんでしたのでコーディネートは終了とさせて頂きます。また機会がございましたらよろしくお願いいたします。」

ことの始まりは6月の末ごろに届けられたA4サイズの封筒からでした。無理やり郵便受けに押し込められたオレンジ色の大きな封筒の差出人のところには、『(財)骨髄移植推進財団』と書かれていました。これはつまり骨髄バンクからのお知らせなのだろう、と僕は思いました。差出人の上のところには「重要・親展」と赤い判子が押され、さらにその上には「大切なお知らせです。至急開封してください。」と書かれていました。急いで開封すると、数枚の書類とアンケート用紙、返信用の封筒、「骨髄提供者となられる方へのご説明書」というタイトルの小冊子が入っていました。さっと書類に目を通すと、僕が以前骨髄バンクに登録していた僕自身の白血球の型が、名前も顔も知らない、しかしこの世のどこかで病気を患っているひとりの人の白血球の型と一致したのだということが判りました。

僕が骨髄バンクに登録をしたのは仙台に住んでいた頃で、まだ妻との結婚のケの字も考えていなかった頃のことでした。付き合い始めてしばらく経った頃、彼女(現妻)が骨髄バンクに登録したいと言いだしたので、休みの日のデートついでに近くの大きな病院に行き、二人でドナー登録を済ませてきたのでした。

それからもう10年以上が経ちます。今日まで骨髄バンクセンターから届けられたものといえば、住所や電話番号、氏名などの変更確認のための書類や定期発行されている骨髄バンクニュースくらいでした。だから僕は骨髄バンクというのは宝くじのようなもので、登録はしてみても、どこかの他人と一致するなどということはほとんど無いに等しいものなのだ、とずっと思っていました。

僕は海外への渡航歴や病歴などを数枚のアンケート用紙に記入し、それらを返信用の封筒に入れ、妻と実家の母に骨髄提供についての同意を確認してから、封筒をポストに投函しました。

数日後、Wさんから初めての電話がありました。Wさんは骨髄移植推進財団=骨髄バンクのコーディネーターで、患者さん+医師側とドナーとの間に入って様々な連絡や調整を行ってくれます。1度目の電話はWさんからの自己紹介で、
「これから岡崎さんのコーディネートを担当させて頂きます、W と申します。よろしくお願いいたします。」
というものでした。とても明るく、丁寧な方だという印象がありました。2度目の電話では、前のアンケートの内容の確認と今後の大まかなスケジュールについての説明で、後日また連絡をくれるとのことでした。3度目の電話では7月27日に上越市内の新潟県立病院で面談と血液検査を行うことが決まりました。4度目の電話は面談の前日で、待ち合わせ場所と目印のリボン、持参するものについての連絡をくれました。

当日、僕は車で県立病院に向かいましたが、人と待ち合わせをすることが数年ぶりであることにとても緊張していました。14:00に待ち合わせ場所の正面玄関に到着すると、Wさんは名札を付けた黄色いリボンを首に下げ、そこに立っていました。簡単に挨拶を交わし、面談を行う部屋へ向かうため、普段は一般の人が入っていけない、医師や看護師がバタバタと仕事をしている中を移動していきます。ようやく一室に通され、面談が始まりました。
「骨髄バンクには登録はしていましたが、実際に適合する人が出てくるなんて思っても見ませんでした。」
まず僕が差し当たりの感想を述べると、
「そんなことありませんよ。中には2回も一致する方もいらっしゃいます。」
とWさんは言いました
。そうして、骨髄とは何かという話や実際に骨髄提供を行った方からの感想などを話してくれました。僕にとっては自分が今までかかわったことのない世界の話で、それはとても面白いものでした。中でも特に驚いたのは、骨髄液(造血幹細胞)移植後の患者さんの血液はABOの型も含めて、DNAレベルでドナーと全く同じ血液に変わるという話でした。また、骨髄液を採取する際、全身麻酔をした上で腰の辺りの左右2箇所に切開をし、その穴からさらに骨盤に100箇所ほど注射針を突き刺すという話を聞いて血の気が失せるような気がしました。しかしWさんの話では、
「男性は全身麻酔の際に尿道に差し込むカテーテルの方が痛いらしいわよ。」
ということでした。そのようにしてあっという間に時間が過ぎていきましたが、最後にもう一つ、今日は血液検査を行いますということでした。現時点では僕の白血球の型と患者さんの白血球の型との一致はまだ不完全で、それをDNAタイピングという方法で完全に一致するかどうかを調べます。血液検査はその為に行われるのだそうです。この検査でお互いの白血球の型が一致しなければコーディネートは終了となります。

今日のWさんからの電話はDNAタイピングを行った結果、僕の白血球の型と患者さんの白血球の型が完全に一致するものではありませんでした。少し残念な反面、ちょっとほっとしているところもあるのです。だって尿道のカテーテルって、めちゃめちゃビビッていたんですから。

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