2011年7月3日日曜日

実父の七回忌を迎えて

 子供の頃、父(注1)に連れられて、その当時はまだ賑やかだった隣市の商店街の中にある大きな映画館に映画を見に行きました。その時に上映されていたのは、後にテレビでも話題に上っていたニカウ氏(注2)主演の『ブッシュマン』という映画と、もうひとつは香港のドタバタコメディ映画で、今では子供映画でしか見られなくなってしまった二本立て同時上映という形をとったものでした。そしてその時は『ブッシュマン』がメインで香港コメディはおまけのような位置付けだったと思います。
 僕たちが映画館に到着したのは随分遅い時刻で、ちょうど上映されている香港コメディもすでにクライマックスに入っているようでした。ですから残すところ、その当日まるまる一本上映されるのは『ブッシュマン』のみとなっていたのです。父は券売所で、それはそれは当たり前のように「今やっている映画はもう終わりのほうなんやから、ちょっと負けてよ」と従業員相手に映画の入場券を値切っていました。その結果がどうであったのかはもう覚えていないのですが、この『ブッシュマン』という映画のことを思い出すたびに同時に蘇るのが、父が映画のチケットを値切ろうとしていた姿です。
 父はクラシック音楽が好きで、家族写真をとても丁寧に整理し、きちんとアルバムに仕上げるとても几帳面な人物でした。だから僕はずっと、父の『値切る』という行為に子供ごころに違和感を感じていました。多分、父親を威厳のあるものであり、崇高な存在として捉えていたのだと思います。しかしやはり父は電気屋さんで家電を購入するときも「展示品なんやから、ちょっと負けてよ」と嬉しそうに値切り、人生の終盤に入ってから海外旅行を楽しむようになると、さらに拍車がかかり、諸外国で「ちょっと負けてよ」の台詞を連発しては買い物を楽しんでいたのでした。
 7月2日はそんな父の7回忌でした。1日の夜に糸魚川を出発し、2日の朝に和歌山の僕の実家に到着、午前中にお坊さんが来てくれてお経を上げてくれました。集まってくれた親戚の人たちと近くのフランス料理店で「もうおなかいっぱいで食べられません」という位のお昼ご飯を食べ、そのまま1泊してから3日の昼に和歌山を出発。21時頃に糸魚川に到着しました。みんなお疲れさま。


(注1・2)表題下の写真は僕の父ではなく『ブッシュマン』に主演していたニカウ氏です。
(注2)画像元 http://homepage.mac.com/ubik_factory/cinema/bushman.jpg

0 件のコメント:

コメントを投稿